凱司が窓を閉めて。

普段、外に面していないからと、あまり閉めないカーテンをも、きっちり閉めた。


外が、見えないように。
花火の音が、聞こえにくいように。


雅は時計を見やり、何事も気にかからない様子でキッチンに立つと、茹でた卵の殻を剥き始めた。


「凱司さん、ずいぶん雅ちゃんに優しいんですね?」

雅に聞こえないように喋るつもりなのか、昌也がひそひそと。


「冷たくあたる理由もねぇだろが」

「俺を見る目と違う」

「……気持ち悪ぃ事言うなよ」


プリントアウトの終わった紙の束をファイルに綴じ込みながら、凱司は煙草をくわえた。

灰皿は、時折、雅が換えていくので溢れはしないけれど、今日は吸いすぎかも知れない。


「一樹も、なんか変だし」

「あいつはいつも変だろ」

「……そうだけど」


昌也の言わんとしていることは、解らなくない。

何がそうさせるのかは、解らない。
大半は同情かも知れない、と凱司は思う。

何故ここに置いたのかも。

何故気になるのかも。


はっきりとは解らない。

ただ、手元に置いておきたいと、思った。

それだけだ。