「無理すんな。いい事ねぇぞ」
いつの間にかすぐ傍に、凱司が立っていた。
こうして真っ直ぐ隣に立っていると、本当に背が高い。
「…身長、いくつですか?」
「………人が気にかけてやるとすぐ話の脈絡なくすのな」
呆れたように見下ろす凱司も、疲れているからなのか、室内に昌也がいるからなのか。
いつもより穏やかに見えた。
「…だって…知りたいです」
「………198、だったかな」
苦笑混じりで呟いた数字に、思わず顔を見上げた。
「…高すぎませんか?」
「高すぎるな」
「……ですよねぇ…」
まじまじと見上げていた雅が、ふと俯いた。
「…首痛い」
ふふっ、と声を上げた雅の頭に手を乗せて、凱司も笑う。
「ちょうど40cm差ですねぇ…。198かあ…隣に立つとどんな感じかな…」
「………明らかにこんな感じだろ…」
何を馬鹿な事を、と怒る気も失せた顔で呆れながら。
もう中入れ、と。
凱司は雅の体をくるりと回し、背を押した。

