どこからか夕餉の香りが漂ってきたのに気づくと、ちょっとほっとした。 駅から数分歩いただろうか。 ゆっくり歩いていたため、実際はそんなに距離は進んでいなそうだった。 家からそう離れていないことはわかっていたけど、それでも迷ってしまったら大変。 辺りが真っ暗になる前に、引き返そうと立ち止まった。 来た方向へ戻ろうと後ろを向こうとして、私はぴたっとその動きを止めた。