すぐに再びノートに視線を戻した時、彼の口元が一瞬緩んだのを見た。 含み笑いのような、にやりと上げた口角。 長い前髪が上手い具合に隠れ、口元だけが露わになり、妖艶な雰囲気を醸し出している。 (や、やばい!色んな意味でまたやばい!) 有紗に解放され、もう一度改めて彼の方を見ると、最初に見た姿と何ら変わらなかった。 (おかしいな、いや、おかしいのは私か。おかしい私を見て笑ったのか?)