心のどこかでは分かっていた。 芽衣子が本心を語ってくれはしないことを。 心配かけまいとする姿も、きっと芽衣子の本心でもある。 それでも聞かずにいられなかった。 今にも消えそうな芽衣子の柔らかい綿雲のような笑みを見て、何故か自分の方が泣きそうになっていた。 本当のことなんて、きっとお互い知らないことばかりだ。 「鍵、先生に返しに行ってくるね!先下駄箱行ってて」 「わかった」