電車に一人乗り込んだ彼は、“いつもの彼らしい”、口角をにっと上げる、あの妖艶な笑みをしながら片手をひらっと上げ、すぐパーカーのポケットにつっこんだ。
少しずつ走り出す電車。
彼は扉ギリギリに近づき、笑みを取っ払った、切ない瞳を覗かせゆっくり手を振った。
どんどん遠ざかる電車。
私達はお互いが見えなくなるまで手を振った。
信じてる。
また必ず、あのお店の前のランプに、明かりが灯る日が来ることを。
どんな暗闇さえも柔らかく照らす、眩しくて懐かしい温もり色をした、あの明かり。
ずっと信じて待っている。
例えその明かりが今は見えなくても、忘れることも消えることもないことを、私は知っているから。



