膝を抱えて揺らめくキャンドルの火をぼんやり眺めていると、ふいに立ち上がった塚田君は、何かを手に持って戻ってきた。
「開けてみ」
「え、何?」
「いいから」
言われるがまま渡されたのは、映画に出てきそうな海賊が所有する宝箱のように、塗装がところどころ剥がれたアンティークな雰囲気を持ちつつ、小ぶりながら重厚感ある鍵つきの木箱。
鍵はもう開けられていたけれど、蓋を開けるときに感じる僅かな軋みは、童話の世界への誘いのようで、久しぶりなわくわく感に途端に胸が躍った。
ほのかなキャンドルの火を受けながら、魔法の眠りから目覚めたアイテム…。
「これって、ひょっとして…。あの神話の?」
「そう。両親が気に入って、神話にまつわる雑貨を集めたんだ」
神話が伝わる、ある地方でだけでしか手に入らないという、とても貴重なアンティーク雑貨とのこと。



