このときは自分でも不思議なほど平常心で聞いていた。 すごく大変な思い切った決心だったに違いない。 それでも動揺することなく最後まで聞いていたのは、いつもの彼の顔に戻ったことに、何よりほっとしたからなのかもしれない。 遠く、どこを見ているかわからない、冷え切ってしまった瞳の彼はもういない。 隣で見る彼の顔は、朝日に反射して黒髪がきめ細かに光るよりも、とても眩しかった。