耳に焼きつく、震えながら途切れ途切れに聞こえてくる彼の声。
バスに乗り込むと、髪や顔、服が雨に濡れつつも拭くことを忘れ、今一度しっかり、塚田君の電話の言葉を思い出してみる。
電話がきたのは、つい数十分前。
『ばあちゃんが倒れて、救急車で病院に運ばれた…』
そう言ったのだ。
病院に着くと、待合い室の椅子に放心状態のまま、ぴくりとも表情を変えずに座っている彼にすぐに気づき、彼から少し離れた隣に座った。
しばらくして、彼の口から小さな声で零れ落ちる言葉を、一つ一つ耳を傾け拾った。
リンコさんは店の掃除をしている時に、急に胸を押さえ、苦しんだという。
救急車が来たころにはもう意識がなくなっていたと…。
話を聞いていると、自分の体中の温度がどんどん冷やされ、脈が速くなっていくのがわかった。
自分の中から言葉がすっぽり消えてしまったかのように、彼にかける言葉が見つからず、ただただ静かな廊下には呼吸音と、遠くで聞こえる足音が響き、冷たい手を両手でギュっと握り締めていた。



