「怒らせるつもりなかった…。ごめん。本当はすげー緊張してる。だから、からかったほうが紛らわせるっていうか。悪気は、ねーから」
抱きとめる手はとても弱く、簡単にすり抜けられるはずだ。
でも、私はそこからどくことはしなかった。
同じ気持ちだったことに、ほっとした。
よっぽど彼の方が素直で大人だ。
タイミングは遅いかもしれないけど、自分の気持ちをまっすぐ伝えられるのだから。
ゆっくり彼の方を向く。
さっきの強い眼差しではなく、伏し目がちにそっと合わす視線と、さっきの言葉でぐっと心が引き寄せられてしまった。
同じように言葉で伝えられるほど大人ではない私は、拗ねた後の子供のように、彼の胸に顔を寄せた。



