見えていないだけ? 見ようとしていないだけ? あれはほんの僅かな瞬間の出来事。 眠そうな顔と声を思い出しては、胸の奥がキュッと締め付けられた。 どこか彼と自分を重ね合わせていたのかもしれない。 学校ではありのままではない自分と。 空席の眩しい机が視界に入る度、本当の彼の姿を見てみたいと思うようになっていった。 ひんやりした冬の匂いが鼻先を触る。 ツンとちょっと痛い。 乾いた風の中に、秋が遠ざかる足音が聞こえてくるようだった。