今日教室で起きた、ナイフの嫌がらせのことを始め、今までの嫌がらせを全部彼に打ち明けた。
誰かに話すことなんて、もうないと思っていた。
叩いてくれた心の重い扉はやっと隙間ができ、光が差して、澄んだ空気が流れ込むようだった。
私きっと変わりたかったんだ。
変わらなきゃいけないんだ。
心地よい残響の中で、しっかり残る深みのある声で、塚田君が言ってくれた言葉。
『熊谷が一番変わるかもしれねーな』
もう、いつまでも同じ場所で足踏みしていられない。
動き出そう。
そう決心した日の夜空は、どんよりした雲が切れ、Lampのドアノブと同じ形の三日月が顔を見せていた。
揺るぎないこの決心を実行するには、少し頭を使う必要があった。
それは嫌がらせをしているのが誰であるか、決定的な証拠を押えなければ意味がない。
五十嵐さん達であることは間違いがないのだけど、いまいち納得いかないのは有紗のこと。



