「ああ。知らない。別に何もないならいいけど」 そうぼそりと言うと、彼は立ち上がってカウンター奥へと去っていった。 違うドキドキが鳴り響く。 塚田君は悪くない。 何であんなこと言っちゃうんだろうと、すぐ後悔が襲う。 芽衣子に冷たく当たったときと、変わってない。 残されたテーブルで、キャンドルの火を見ていると、視界いっぱいに炎が揺れだし、しだいに滲んでいく。 愚かさ不甲斐なさが、どんどん炎を強くするようで。 気づけば涙が頬を伝っていた。