「そこのこぐまさん。おうちに帰らなくていいのかな」
「へ?私?」
すっとぼけた顔で聞くと、塚田君はこくりと頷いた。
「やけに楽しそうに見てるけど、どうした?」
(ばれてたか…)
「気づいちゃったんだけど、ちょっと暗い感じが、こう、おとぎの国を彷彿させて、わくわくするんだよね~まいったわ。私こういう雰囲気好きなんだー」
「ぷっ、何かすげー無邪気だな。くっくっく」
彼は口に手を当て笑うのを堪えた。
そんな風に笑う姿も初めて見る。
高鳴る胸の音の意味は曖昧に、でも心地よく、ごく自然に響いていた。
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