閉店時間が近いからか、四時をちょっと過ぎた今、私以外に客はいなかった。
窓の外は、進んだ夕暮れの淡い暗がり。
アコースティックな音楽がゆったりと店内を流れる。
一日の終わり始めのこの微妙な時間に、何も言わず背をもたれかかせてくれるような、そんなささやかながらとても安心感を与えてくれる。
ここに訪れる、それだけで。
だからか、とくにこの時間は好きだった。
初めて訪れた日も、そんな時間だったはず。
「熊谷、はい。どうぞ」
「え、これ…」
塚田君から渡されたのは、手持ちつきの小さな紙袋。
私の両手の上に、ちょこんと置かれた。



