夜空にランプ


「…うん!そうだね、行こうかな」


「渡したいもんがあるんだ」


「そうなの?何、何?」



ぼさぼさの長い前髪から、やっと覗き見える瞳が、詰め寄る私からとまどいがちに視線を逸らす。


「んー。ここじゃ言えねーかな。ま、楽しみにしといて。ほいじゃ」


「え、ちょ」


「ちーちゃん、早く行かないと。始まるよ」


「う、うん」



芽衣子に急かされつつ、気になる話を途中で切った塚田君の方を振り返る。


よろめきながらも、上履きをちゃんと履き直しているのが見えた。


そして堂々と誰もいない教室へ向かっていく。