「…うん!そうだね、行こうかな」 「渡したいもんがあるんだ」 「そうなの?何、何?」 ぼさぼさの長い前髪から、やっと覗き見える瞳が、詰め寄る私からとまどいがちに視線を逸らす。 「んー。ここじゃ言えねーかな。ま、楽しみにしといて。ほいじゃ」 「え、ちょ」 「ちーちゃん、早く行かないと。始まるよ」 「う、うん」 芽衣子に急かされつつ、気になる話を途中で切った塚田君の方を振り返る。 よろめきながらも、上履きをちゃんと履き直しているのが見えた。 そして堂々と誰もいない教室へ向かっていく。