「ごめんな……」



もう一度抱きしめると、深音はふるふると、首を横にふった。


痩せてしまった頬に手をあて、唇をあわせようとした瞬間。


胸ポケットに入れた仕事用の携帯が震えた。



「はい。あ、すみません……!

はい、すぐ帰ります」



そうだった。


昼休みだったんだ。



「……会社……?」


「あぁ……早退すりゃ良かった……」


「ダメだよ、そんなの……早く、戻って」


「深音……」



深音は、涙をこらえて、笑った。



「大丈夫。

確かに、悪くはなっちゃってるけど……

そんなにすぐ死んだりしないから。

お仕事、頑張ってね」


「……」


「会えて、嬉しかった」



また、ふわりと微笑まれて。


どうしようもなく、自分が情けなくなった。


励まされる立場の深音が、こんなに強いのに。


俺は、何をやってるんだろう。