自分でふっておいて和紗はしまった!と頭を押さえてしまった。
「まぁ、如月の関連会社や人物はまだまだホコリが出てきそうだから、監視も兼ねて稼がせてもらうさ。
だけどな、くれぐれも気をつけろよ。
個展の会場は黒田さんの協力もあるから警備もばっちりだろうけど、その他の場所では何があるかわからないだろうからな。」
「和紗・・・ありがとな。」
「あのなぁ。もう主じゃないんだから和紗さんって呼んでもらいたいね。
といっても・・・会ったときから年上なのに呼び捨てにされてたけどな。
ほんとに生意気なやつだよ。おまえさんは・・・。」
そういって和紗は行く先を告げずに仕事とだけ言って出かけていった。
和音は早速、小さい頃から出入りしていた黒田画廊へ行き、オーナーの黒田充彦を訪ねた。
「よお、来たな。天才芸術家!」
「なんですか、いきなり。
僕は、新入会員の無名の画家にすぎませんよ。」
「表向きは・・・だろ。
俺から見れば才能も売り込み方も抜群で、しまいにはマネージメントから経理事務までこなしてしまう美しき魔王ってとこだがな。」
「魔王はひどいですよ。あ・・・個展のことなんですが、場所と・・・」
和音が個展の話をしようとすると、黒田はニヤリと笑って頷いた。
「前にきいてた広さで、もうおさえてあるよ。
あとは、この旅の間に増えたという絵をいちおう見せてもらおうかな。」
「はい。昨日も少し色付けしたんですけど、今週中にすべて仕上げるつもりです。
あれ?オーナー・・・?黒田さん!どうしたんです??」
和音はスケッチブックを広げて、青ざめた顔をしている黒田を見て叫ぶと、黒田が見つめている絵を確認して驚いた。
「黒田さん・・・・・その絵は今回の個展には出しません。」
和音がそう呟くと、黒田はすかさず和音を問いただした。
「この娘をどこで見たんだ?
教えてくれないだろうか。」

