菜の花の君へ

智香子が夕飯を作り終えてすぐ、玄関のドアが開いて声がした。


「ただいま~。ん~~外までいい匂いがしてたけど、うまそう~!」



「あ~ん、先にちゃんと手を洗ってきてね、先生~。」



「お、おお~」



先生と呼ばれたこの男は、中務和之28才。

智香子の両親が亡くなって、祖父のところへ行ったときに彼は祖父の家に住んでいた。

施設で荒れていた少年を智香子の祖父は自宅へ連れて帰り、息子のように育てていたのだった。

そこへ智香子を預かることになり、2人は兄妹のように生活をしていた。

しかし、彼は遠方の大学へ通うことになり、祖父の家を出ていってしまった。



それからは智香子と祖父の生活が続いていたのだが、祖父が病気で亡くなり、

智香子は叔母にあたる人の家を2か所にわたって移動して、今度はどこに移動

させられるのかと心配を抱えながら高校に通っていた3年の春に、和之が智香

担任の教師として学校へ赴任してきたのだった。



回想・・・・・



「えっ・・・どうして?」



「やぁ、久しぶりだな。」