菜の花の君へ


和音が旅行に出てちょうど1週間目の夕方・・・智香子の携帯に和音からのメールが届いた。



(明日の昼過ぎくらいに帰宅できると思う。今回の旅ではいい景色といい人にたくさん出会えたから、けっこう自分ではいい絵が描けたと思っているんだ。

帰ったら仕上げて見せてあげるから期待してて。
あ、そうだ。15年前のあの畑はまだつぶされてなくてね、地主さんが花もいっしょにそのまま残してくれていたよ。

うれしくて、1枚だけ仕上げたよ。)



「ん?添付2枚・・・。えっと・・・こ、れは・・・。えっ!?

どうして?どういうことなの??15年前の・・・って。」



和音から送られてきた1枚目は菜の花畑の写真だった。
とても懐かしい気持ちにさせてくれる田舎の風景で、智香子は癒された気持ちになった。



そして2枚目をわくわくしながら、目にした途端・・・携帯電話を落としてしまいそうになる。



「こ、この絵は・・・!料理長の働いてる店のあの絵の場面。
あの絵とそっくりだわ。

そして、この女の子・・・女の子が大きくなってる!
ってことは成長した女の子に会えたってことよね。

それで・・・いい絵が描けたって上機嫌なのね。
でも15年前のあの畑って・・・何のこと?
きっと和音さんにとってすごくいい思い出ってことなのかな。」



すぐに電話をかけようかと思った智香子だったが、こちらへ向かっている途中だろうとメールを返信しておいた。



(お疲れさま~。レストランに飾ってあった絵の場所ですね。
本物の絵を楽しみに待っています。

絵の中のお嬢さんにも会えたみたいでよかったですね。)



智香子からの返信メールを見た和音は思わず声をあげた。


「はぁ?そうか・・・そういうことなんだな。ふふっ。
あはははははは。」