智香子は驚きに言葉を失ってしまった。
その様子に和音が気づいたのか、部屋の前にいた和紗を不審に思ったのか、和音は和紗にもう出かけることを強く言った。



「はーい。・・・・・まぁ2~3日じっくり考えておいてね。
行ってきます。」



「はぁ~。何なの・・・あの人は。」



和音と和紗のどちらかの言い分をきけば、とてもひとり暮らしなんてできる状況じゃない・・・と智香子は溜息をついた。



しかし、智香子の心はもう決まっていた。

(和音さんはほっとけないよ。才能豊かで、会社のトップとして突っ走ってきた人だけれど、これからは使われる人間にならなきゃいけないだろうし、世の中そんなに甘くないと思う。

昨日の目は気弱で、悲しそうだった。あんな目・・・捨てられる子犬みたいで離れられるわけないでしょうに。)



それから数日のうちに正式に和音は社長を解任され、会社も辞めてしまった。


「いよいよ、この屋敷ともお別れだ。

ちなみに、僕はマンション暮らしっていうのをしたことがない。
これからのこと頼むよ。智香。」



「はいっ、おまかせください。和音さんの不安とか無念を癒して差し上げますわ。」


「はぁ?・・・なんかキャラ変わってる気がするけど。よろしく頼む。」