湯河の言葉に智香子は両手を口にあてて涙ぐんだ。
「な、何か和音にされたのか?
困っているなら言ってくれないか。
俺で役に立てることなら、協力するからさ。」
「あ、ちがいます。
和音さんは先輩の言うとおり優しい人だと思います。
氷のプリンスになってしまったのは私のせいかもしれないと思って。」
「どういうこと?」
「和音さんはご両親を亡くされてから、お兄さんと話をしたそうなんです。
そして、お兄さん、つまり私の夫は本当の家族よりも私との生活をとってしまった。
夫が和音さんの家にもどって暮らしていたら、和音さんは芸術家としてのびのびと成功をおさめていたかも・・・。」
「それは違うと思うよ。
根本的に、両親の考え方とか亡くなるまでのいきさつとか彼はすべてを見てきてダメージを受けながら育ってきてるし、生き別れてた兄と会っただけで世界がバラ色になるなら、君と今いっしょに住まおうなんてことも考えなかったんじゃないかな。」
「そうかしら・・・。」
「ああ。俺が和音さんの今の立場だったら・・・氷なんてとっくに解けちまって、手に入れた姫をベッドに誘う努力をするね。」
「じょ、冗談はやめてくださいよ!」
「君は自分のかわいさをわかっていない。
男はすべて論理的に物事を考えることはできない生き物なんだよ。
しかも、君はその若さで未亡人だ。
心に傷を負って助けを求めてる。
男としてはその・・・そういう女性を放ってはおけない。
まさかとは思うけど・・・もう氷のプリンスなどいないかもしれないな。
なんてね。あははは。」
(そういえば、私は氷のプリンスなんて言葉は知らなかったわ。
和音さんは何でも打ち解けるまではいかないけど、私に合わせてくれてるような気がする。)

