菜の花の君へ


智香子は犬の唸り声と迫力に身動きできずに、立ち尽くすしかできない状況に陥った。


(噛まれる・・・)


「うわっ!このバカ犬ーーー!おりゃあーー!」


「キャイーーン・・・クウクウク・・・」


ドーベルマンはお腹を蹴られて地面に突っ伏した。



「智香ちゃん、大丈夫?」



智香子の前に立ちはだかって犬を蹴ったのは湯河だった。



「どうして・・・?」


「守らないと、噛まれちゃってただろ。
それに、この犬は知り合いの犬でね・・・僕が倒さないとめんどくさいことになるところだったんだよ。」



犬の後方から、トレーナーらしき男と全身キラキラ状態に近いハデな女がやってきた。



「うちのコまた元気が余っちゃって、逃走しちゃったの。
ごめんあそばせ~またどなたかにご迷惑をかけちゃったのかしら。」