和之と智香子は朝、2人で役所に行って婚姻届を提出し、智香子はその後大学へと向かい、和之も職場である高校へと向かった。



智香子は大学の友達ひとりひとりに、妻になった報告をしたいと思ったが、彼氏の話もしていないところに、いきなり夫ができたなんて話をしたら説明が大変だと思い、とりあえず結婚指輪を指にはめてから話をすることにした。






「お願いしておいた指輪できていますか?」


和之はいつもより早めに仕事をきりあげ、駅前のデパートの宝石店を訪ねていた。


「包装はいかがなさいますか?」


「あ、すぐに出せる方がいいからしなくていいですよ。」



「これからプレゼントですか。きっと喜ばれますわね。
お幸せに・・・。」




和之は楽しみにきっと待っているであろう智香子に早く指輪を渡したくて、いつものバス停ではなく、タクシーに乗り込んで家までの道のりを運転手に伝えた。


「よし、ああ・・・こんなに帰るのが緊張する日は初めてだな。」


そう思ったとき、突然腰に力が入らなくなった。