今年もまた春が来て、花がたくさん咲き乱れている。


桜は好き。やさしい色をしてはかなくちらちら散っていく様子が、女性的で素敵に思う。


でも、黄色い菜の花に触れることは高校3年から再びできなくなってしまったのだ。


坂下智香子、現在19才。N大文学部の1回生として通学することになった。



就職するはずではなかったのかって?


高校の担任の熱心な進路指導のおかげで、進学することになりました。




毎日、同居させてもらっている男の家から通学することを条件に。



血のつながりなんていっさいない男の名は、中務和之。

私より9つ上のおっさんで、昨年度は私の担任の先生だった男。


この男はずっと昔、私がちっちゃかった頃も、菜の花遊びをさせてくれなかった嫌な奴なのだ。



お金を出してくれて、親戚の文句を鎮めてくれたことについてはいくらお礼を言っても足りないくらい感謝しているが、どうしても素直に話せない相手でもあるのだ。



とはいっても、智香子は来年には成人式を迎えるのだから、今までのようにはいかないところを見せてやる!とポジティブに日々暮している。