「アナタの凶行は条約に違反しています。が、教会にも慈悲はあります。ただちに改心し、その力を乱用することなく、日常という枠組みへ戻ってください」

「っ、だれが、そんなっ……!」

よほど、桜庭の本質というのは粘性が高いのだろう。

上野が言えば言うほど、彼の蛇はじわりじわり再生していく。

十まではいかずとも、首と生気を取り戻した三匹の蛇が、掠れた声と唾液を口腔に溢れさせながら、上野へ向かう。

ただもっとも、

「粛正のもと」

教会の使徒と自らを称した少女の前に、

「断罪を」

蛇の牙など、蝋で作った翼のようなものだった。

華麗ともいえる太刀捌きも四半秒、蛇頭はあの時のように、細切れになっていた。

上野楓は一歩も動いていない。すべて、宙に浮かぶ剣による斬撃。

「桜庭紅蓮、改心を」

「く、そ……ぉ……」

上野の冷徹さが、桜庭の頑固さが、目に見えて圧縮されていく。

だから和幸は、

「もう、終わりだな」

上野の停止命令を避け、進み出た。

驚く少年少女の間に割って入る。

その『凶行』の前に、しかし、すばらしいほど頭は、冴え渡っていた。