† 第十節



小名木和幸は、それを見て当然だと思った。

上野に押しやられたグラウンドの端、遠目に見る超常の戦いを前に、しかしただただ感慨薄く、

「ふうん」

と、首を縦に。意味はない。納得からの、ただのうなずき。

一瞬も一瞬、おとなしくなったように見えた桜庭の腕、蛇の頭が、分裂した。

上野は驚いていたようだが、人間の腕の先にはもともと、手というものがある。その手は五つの指を持っている。

同じように、蛇の頭が左右それぞれ、五つに分裂しただけのこと。

また、上野が十の剣を操るのなら、桜庭もそれに抗して、当然だと思っていた。

「桜庭くんっ、凶行をやめてください!!」

と、悲痛にさえ聞こえる上野の声。

彼女の周囲から九本の剣が、飛んだ。

ミサイルのような、手を使わない不思議な投擲。

その刃は、見事な剣閃ののちに、九つの蛇の頭を貫いた。

剣はそのまま、遥へと飛び抜けていく。