「なあ母さん」
「なにさ」
と、気付いたら、玄関のすぐ真横にある流しで手を洗っている母に、訊ねていた。
「俺が死んだら、やっぱ悲しむ?」
「はあっ?」
当然のように、頓狂な声が返ってくる。
きゅ、と水を止めた母が、タオルで手を吹きながら、寝る時以外は開けっ放しのふすまを抜けてやって来る。
眉間に、しわが寄せられていた。
「バカなこと言ってんじゃないよ、もう。そんなの、悲しむにきまってるでしょうに」
その表情な、少なからず父が死んだ時のものと、似ていた。
「そうだよな。やっぱそうだよな」
「そうよ。なに? なにかあったの?」
「いや、別に」
「本当に? ほんとになんにも?」
見つめてくる母の目に、今まで何度味わったことか、『心配』という色を見る。
「なにさ」
と、気付いたら、玄関のすぐ真横にある流しで手を洗っている母に、訊ねていた。
「俺が死んだら、やっぱ悲しむ?」
「はあっ?」
当然のように、頓狂な声が返ってくる。
きゅ、と水を止めた母が、タオルで手を吹きながら、寝る時以外は開けっ放しのふすまを抜けてやって来る。
眉間に、しわが寄せられていた。
「バカなこと言ってんじゃないよ、もう。そんなの、悲しむにきまってるでしょうに」
その表情な、少なからず父が死んだ時のものと、似ていた。
「そうだよな。やっぱそうだよな」
「そうよ。なに? なにかあったの?」
「いや、別に」
「本当に? ほんとになんにも?」
見つめてくる母の目に、今まで何度味わったことか、『心配』という色を見る。

