† 第一節



目覚まし時計を渋々止め、母の作る甘い卵焼きを胃に流し、眠気が取れないまま学校へと登校した小名木和幸は、授業に集中できずにいた。

寝不足、怠惰、反抗期というわけではない。ただ、右斜め前方のクラスメイトが気になって仕方ないだけである。

貧乏ゆすりをする、クラス委員長――桜庭紅蓮。

まるで芸能人のように、名字も名前も洒落た響きのクラス委員長は、しかし今、激しい貧乏ゆすりを繰り返している。

かたかたかたかた……

ずっと、彼の足の振動で、高さが微妙にずれている机がそんな音をあげている。

今は四時間目。もうすぐ昼休みになるというのに、クラス委員長は朝のホームルームからずっと貧乏ゆすりをやめない。

休み時間にふと席を立ったかと思えば、立った姿勢のまま数秒停止し、また椅子に落ちる。そして貧乏ゆすり。