† 第三節



もうまもなく授業が終わるという頃になって突然、桜庭紅蓮が立ち上がった。

「くはっ――」

と、漏れたかすれた息。

そして、彼が自分の胸を強く押さえつけているのを見て、教師が心配の色を浮かべる。

「ど、どうした桜庭? やっぱり保健室行くか?」

途端に、

「くっ、ふ、はっ……ははっ、くふくくっ、かっ、はは、ははははは!」

掠れた呼気が連なり、笑いになった。

朝からの奇妙な行動が行動だけに、クラスも教師も、呆気に取られている。

その、呆気に取られた瞬間が――

命取りになった。

突然、桜庭の右腕が、真横へ伸びた。

比喩ではない。

目を疑うような一瞬で、人間の腕から大蛇の頭に姿を変えた桜庭の腕が、彼の右側にいる生徒を包み隠していた。

「「「ぇ?」」」

脈絡など、あろうはずもない。クラスが、教師が、空気が、完全に呆けた。