お姫様の作り方

「困る…?」

「困るよ、本当に…困る。」


〝困る〟と言われて心が軋む音がした。…陸くんを困らせている自分がさらに嫌になる。ただでさえ今、自分のことがあまり好きではないのに。


「…ごめんなさい。困らせて。」

「…期待、するから。」

「え?」


陸くんの言葉の意図するところが全然分からない。
陸くんの腕がぐっと強くなった。冷たかったはずの頬が熱い。


「…期待するよ、俺。」

「期待…?」

「海央ちゃんに必要とされてるって。」

「…してる…よ…?」

「…じゃあ、言い換える。
そこに、特別な感情があるっていう前提で必要だって言ってるって思う〝期待〟をしちゃうんだ、俺は。」

「え…?」


陸くんの言葉を冷静に頭の中で整理する。
その間も腕は全然緩んでくれなくて、鼓動だけがスピードを増す。


「特別な感情…。」

「少なくとも、俺を近所のお兄さんではなく、一人の男として見てくれてるって。」

「おと…男っ!?」

「あー…その反応が返ってくるってことは違うなー…。」


そう言って陸くんがゆっくりと身体を離した。
…また、陸くんの方を上手く見ることができなくなってしまった。