お姫様の作り方

「…なるほど。」

「うん。必死な姿も、いっぱいいっぱいなところも、…真っすぐに想いをぶつけてくるところも、そして最後には振られるところも…全部が重なって見えた。冷静に彼に自分を重ねて…苦しくなった。」


苦しくなった。だから…


「…だから、陸くんに会いたくなった。」

「え?」


少しだけ困惑した表情に変わった陸くんを真っすぐに見つめ直す。
…会いたくなったのは、本心だから。


「…大丈夫だって、言ってほしいって…思っちゃったの、私。」

「俺に?」


私は小さく頷いた。頷いたことで視線が下がって、陸くんに上手く目線を合わせられなくなってしまった。


「…樹先輩を振って、…本当はそこで振られて、それで行き場のないぐちゃぐちゃな想いをそのまま受け止めてくれた。…陸くんは。私の強がりも見抜いてくれた。
陸くんは本当に何気なく私に色々な言葉をくれたけど、その一つ一つが私には優しくしみた。悲しい気持ちでいっぱいだったはずなのに、陸くんの言葉は嬉しかった。
…あの時みたいにぐちゃぐちゃな想いを抱えて…どうしていいか分からなくて…だから…会いたかった、陸くんに。陸くんを利用してるみたいでずるいって思ったけど、でもっ…。」


ほんの一瞬、腕が引かれた気がした。
そう思ったときにはもう陸くんの腕の中にいた。


「…陸…くん…?」

「会いたい会いたいって…そんなに言わないでよ、頼むから。」

「ご…ごめんなさい…私迷惑…。」

「…じゃないから。じゃないから困るんだよ。」


陸くんの小さな声が耳元で聞こえる。
小さな声のはずなのに耳元で言うものだからこれ以上ないってくらいにはっきりと聞こえてしまう。