お姫様の作り方

「…何があったの?」


ちょっと顔を上げればすぐ近くに陸くんの顔がある、そんな距離で話すのは…少し気まずい。
その気まずさを汲み取ってくれたかのように陸くんはゆっくりと距離を取ってくれた。


「…ちょっと近かったね。この距離なら大丈夫?」

「…うん。」


陸くんが軽く微笑んでくれる。
…たったそれだけのこと。周りから見れば本当にそれだけ。でも私にとってはそれだけですっと、心が軽くなる。


「…陸くん。」

「ん?」

「…私、告白された。」

「え…えぇ!?」


陸くんにしては大きな声で叫んで、そして目を大きく開いて私を見る。
その声の大きさにも表情にも、私の方が驚いてしまう。


「…私もびっくり。」

「俺もびっくりだよ。」

「陸くんの声にもびっくりしたけど。」

「だっていきなりだし。いやでもごめん。ってか今はちゃんと海央ちゃんの話を聞く時だよね。」

「…ううん。陸くんが驚くのも当たり前だよ。私だって…本当にびっくりした。
心の中では本当にびっくりしていたんだけどね…でも、不思議なくらいどこか冷静だったの。
…最初から…頭の中には〝断る〟っていう選択肢しかなくて。でも、それなのにそれは言えなくて。」

「…言えないって…まさかオーケーしたの?」

「ううん。でも、正しく〝ごめんなさい〟はできなかった。」


しようと思えばあの場でできたのに、それでも、できなかった。


「どうして?」

「…自分に重なって…見えた、から。」