お姫様の作り方

* * *


「陸…くん…?」


家族や友達以外の誰かに、こんな風に抱きしめられたことは生まれて初めてで、どうしていいのか分からない。
ただ、陸くんの腕がとても強くて、その強さに比例するように心臓がうるさくなる。


「…冷たいよ。冷え切ってる。」


抱きしめる腕をゆっくり緩めて、陸くんが額を重ねてきた。ぐっと近付く顔に、こういうことに不慣れな私はドキドキを隠せない。


「陸…くん…。」


目も泳ぐ。上手く陸くんに視線を合わせることができない。


「慌ててたから手袋してこなかったけど、でも走ってたから今あっついわ。手も熱いから…熱、奪っていいよ。」


本当に熱い陸くんの手が私の両頬にあたる。冷え切った私の頬は陸くんの手からぐんぐん熱を吸収してしまう。


「…風邪ひくよ、本当に。すごく冷たい…。」

「…ごめ…んなさ…。」

「謝らなくていいよ。…だって、何かあったんでしょ?」


陸くんの目はやっぱり優しい。…私は、陸くんにこう言ってもらうのをどこかで待っていた。…なんて自分勝手。そうは思うけれど、陸くんの顔を見れたその瞬間にどこか安心したのは紛れもない事実だ。


「…うん。」


陸くんの前だと、こうして素直に自分の弱いところをさらけ出せる。
陸くんはこうして、自分一人ではどうしようもない想いに寄り添ってくれる。