【陸side】
「海央ちゃんが帰って来てない?珍しいわね、こんな時間に。」
「え?」
母親が出た電話での会話の中に突然登場した〝海央〟という名前を敏感にキャッチする耳。
時計をみやると7時。12月の上旬ともなると暗くなって随分経つ時間だ。
一般的な高校生がどうかは分からないが、その口ぶりからすると海央ちゃんが7時に家に戻っていないのは〝異常〟なことらしい。
「何の連絡もないの?…そう、それは心配ね。お家の周りは探した?」
「あ、そうよね、今日はお仕事よね。今帰ってきたの?」
比較的おっとりとした我が母親の口調からは切羽詰まった雰囲気を感じないが、俺はどこか焦っていた。
俺の母親も海央ちゃんの母親もおそらくは知らないだろうから。
家に帰りたくないと思う瞬間があることを。そしてその理由は家のことではないことを。
気付けば手が、母親の手から受話器を奪っていた。
「陸?」
「おばさん、海央ちゃんの携帯の電話番号教えてくれませんか?」
『陸くん?』
驚いたような声で2回も名を呼ばれれば、俺がどれだけ突飛な行動をしているかは分かる。
それでも…心配なのだから仕方がない。
「探すのを手伝います。海央ちゃんの携帯の番号を…。」
『携帯、かけたんだけど繋がらなくて…。』
「学校帰りだからサイレントにしてるかもしれませんね。
大学も終わったんで俺も探します。」
『ありがとう、陸くん。ちょっと待ってね、番号は…。』
俺は海央ちゃんの携帯の番号を急いで登録し、電話を切った。
「陸、そんなに海央ちゃんと今も仲が良かったの?お母さん知らなかったわ。」
「…そんなんじゃないよ。ただ、心配なだけ。」
小さな頃のままずっと仲良くしてきたわけじゃない。
…よく分からない巡り合わせみたいなものだ。
妙なタイミングで引き合った。…だから、心配で、気になる。
俺はスニーカーを履き、コートを羽織ってマフラーを巻いて外に出た。
「海央ちゃんが帰って来てない?珍しいわね、こんな時間に。」
「え?」
母親が出た電話での会話の中に突然登場した〝海央〟という名前を敏感にキャッチする耳。
時計をみやると7時。12月の上旬ともなると暗くなって随分経つ時間だ。
一般的な高校生がどうかは分からないが、その口ぶりからすると海央ちゃんが7時に家に戻っていないのは〝異常〟なことらしい。
「何の連絡もないの?…そう、それは心配ね。お家の周りは探した?」
「あ、そうよね、今日はお仕事よね。今帰ってきたの?」
比較的おっとりとした我が母親の口調からは切羽詰まった雰囲気を感じないが、俺はどこか焦っていた。
俺の母親も海央ちゃんの母親もおそらくは知らないだろうから。
家に帰りたくないと思う瞬間があることを。そしてその理由は家のことではないことを。
気付けば手が、母親の手から受話器を奪っていた。
「陸?」
「おばさん、海央ちゃんの携帯の電話番号教えてくれませんか?」
『陸くん?』
驚いたような声で2回も名を呼ばれれば、俺がどれだけ突飛な行動をしているかは分かる。
それでも…心配なのだから仕方がない。
「探すのを手伝います。海央ちゃんの携帯の番号を…。」
『携帯、かけたんだけど繋がらなくて…。』
「学校帰りだからサイレントにしてるかもしれませんね。
大学も終わったんで俺も探します。」
『ありがとう、陸くん。ちょっと待ってね、番号は…。』
俺は海央ちゃんの携帯の番号を急いで登録し、電話を切った。
「陸、そんなに海央ちゃんと今も仲が良かったの?お母さん知らなかったわ。」
「…そんなんじゃないよ。ただ、心配なだけ。」
小さな頃のままずっと仲良くしてきたわけじゃない。
…よく分からない巡り合わせみたいなものだ。
妙なタイミングで引き合った。…だから、心配で、気になる。
俺はスニーカーを履き、コートを羽織ってマフラーを巻いて外に出た。



