「…ご…めんな…さい…今は私…。」
かすれて上手く言葉にならなかった声を彼は上手く聞き取ってくれた。
そして少し切なげに言葉を漏らした。
「…今すぐ答えが欲しいとか思ってないから…ゆっくり考えて。」
「…う…ん…。」
彼にそう返すのが精一杯で、私はそのまま俯いた。彼は「じゃあまた」と言うと、ゆっくりその場からいなくなった。
頭の中がぐちゃぐちゃだ。彼が少し前の自分にしか見えなくて苦しい。
でも一つだけ違うことは、私には樹先輩のように想う人がいるわけではないということだけだ。
「…なんで私、陸くんって…。」
名前を呼んでしまったんだろう…。何で陸くんにすがるような真似を…。
でも、今…。
「…会いたい…っ…。」
会いたいと思ってしまう。陸くんに、会いたい。
『大丈夫だよ』と言ってほしい。傷付けてしまうことを、自分のように傷付くであろう人を目の前にして躊躇う自分をそのまま受け止めてほしいと思ってしまう。
今日も風が冷たい。気温としても今日はこの月一番の寒さだ。
でもそれ以上に寒さが痛く刺さるのは…風のせいだけじゃない。
「…帰ろう。」
足取りは重い。家に帰って何になるんだろう。
気付けば足は、別の方向へと向かっていた。
かすれて上手く言葉にならなかった声を彼は上手く聞き取ってくれた。
そして少し切なげに言葉を漏らした。
「…今すぐ答えが欲しいとか思ってないから…ゆっくり考えて。」
「…う…ん…。」
彼にそう返すのが精一杯で、私はそのまま俯いた。彼は「じゃあまた」と言うと、ゆっくりその場からいなくなった。
頭の中がぐちゃぐちゃだ。彼が少し前の自分にしか見えなくて苦しい。
でも一つだけ違うことは、私には樹先輩のように想う人がいるわけではないということだけだ。
「…なんで私、陸くんって…。」
名前を呼んでしまったんだろう…。何で陸くんにすがるような真似を…。
でも、今…。
「…会いたい…っ…。」
会いたいと思ってしまう。陸くんに、会いたい。
『大丈夫だよ』と言ってほしい。傷付けてしまうことを、自分のように傷付くであろう人を目の前にして躊躇う自分をそのまま受け止めてほしいと思ってしまう。
今日も風が冷たい。気温としても今日はこの月一番の寒さだ。
でもそれ以上に寒さが痛く刺さるのは…風のせいだけじゃない。
「…帰ろう。」
足取りは重い。家に帰って何になるんだろう。
気付けば足は、別の方向へと向かっていた。



