お姫様の作り方

「…それを見抜かれちゃったってことは…やっぱり上手くいかなかったってこと?」

「ううん。そうじゃないよ。
…同じ言葉を返すようで悪いけど、でも俺も…今海央ちゃんがいてくれて良かったって思う。自分の傷だって癒えてないのに、海央ちゃんに無理させちゃってごめんね。」

「無理は…してない。陸くんにいっぱい助けてもらったから…ちゃんと返したい。…まさか、こんな形で返すことになるとは思わなかったけど。」

「…正直言えば、予兆はあったんだけどね。」

「え?」

「海央ちゃんにばったり会った日もね、まぁー…本当は少しイライラしてたんだよ。色々あって。
でも、海央ちゃんに会ってそんなことは真っ先に頭から吹っ飛んだ。海央ちゃんがあんな風に泣くの、多分生まれて初めて見たし。」

「…あんまり泣かないもん。」

「うん。だから、よっぽど苦しいことがあったんだなって。
俺が不幸面してていいはずないって咄嗟に思ったんだよな、あの時。
ま、だから貸し借りナシだね。これでチャラだ、色んなものが。というか…俺たち、傷の舐め合いしてるみたい。」


また零すように笑って陸くんはそう言った。
それには私も同意だ。


「…うん。傷の舐め合い。…振られた者同士。」

「海央ちゃんは違うだろー?振ったって言ってたじゃん。」

「さよならしたのは私だけど…元々先輩は私のこと好きじゃなかったんだよ。だから同じようなものだよ。」

「…そっか。じゃあ今、『チーム振られた』は一人じゃないわけだ。
それだけでだいぶ、〝人魚姫〟とは違うね。」


そう言って笑った陸くんはやっぱりどこか無理をしているように見えてしまうけど、でも今日見た中で一番優しい笑顔だった。