お姫様の作り方

* * *


あれから一週間。
…時折樹先輩と美森先輩が一緒にいる姿を目にして、ズキっと心が音をたてるけれど、それでも泣くほどの痛みではなかった。


帰り道は風が冷たい。もうかなり日が暮れるのが早くなってきた。
まだ4時だというのに少しずつ日は傾き、影が増える。


「…陸…くん…?」

「…海…央ちゃん…?」


浮かべられた表情に、何を言えばいいのか戸惑う。笑ってはいるのに、どことなく無理をしているようにしか見えない。
公園のベンチに座って指をクロスして、そして下を向いていた陸くんに声を掛けて良かったのかと今更ながら思ってしまう。


「ご、めんなさい…声、掛けちゃって…。」

「え、あー…大丈夫大丈夫。ってか何で謝るの?海央ちゃん、悪いことしてないでしょ。」

「でも…陸くん…。」


〝無理して笑ってるように見える〟なんて言えない。だから言葉がそこで詰まった。


「あー…やっぱり上手く笑えてない、俺?」

「え…?」


『情けねぇ』なんて言いながら、陸くんは空を仰ぎ見る。その口からはかれた息が白く染まる。


「気、遣わせちゃってごめんね。…海央ちゃんのこと困らせちゃった。」

「陸くん…?」


何を言えば良いのか分からなくて、ただ名前を呼ぶことしかできない。
そんな私を見て、陸くんは少し切なげに口を開いた。


「今度は俺が失恋だ。」

「えっ…。」


驚きと共に声があがった。でも、驚いたのは最初だけ。
…陸くんの顔を見れば、納得がいく。無理をしてでも笑顔を浮かべることのできる陸くんが大人に見える。