お姫様の作り方

* * *


「お邪魔…しました…。」

「全然だよ。」


優しく微笑む陸くんに心のどこかでホッとする。
全ての想いが綺麗に精算できたわけじゃない。だけど、整理はできるような気がしてきた。…ゆっくり、時間はかかるだろうけど、でも確実に進むための準備はできた。陸くんがいてくれたから。


「…ありがとう、陸くん。
本当は…誰にも見つからずに帰りたかったんだけど…でも、今なら陸くんにこうして会えて良かったなって…思う。なんか都合良い話だけど。
う、うまくまとまらないけど、でも、本当にありがとう。すごく…助かった。」

「海央ちゃんが泣き止んでくれて良かったよ、ほんと。
こういう時こそ年長者が役に立つでしょ?」


少し自慢げに笑ってみせる陸くんに…なんだかちょっと昔を思い出す。
私が小さい頃、頭の良かった陸くんは色んな話をしてくれた。ちょっと自慢げに話す姿が好きで(と言っても恋愛的な意味じゃなくて)、そしてその話もすごく面白くて私は喜んで聞いていたっけ…?
…なんだか、あの時にとても似ている気がする。


「…うん。陸くんの言葉はいつも温かい。だから私も心を整理できそうだよ。」

「もし何かあったらいつでもおいで。力になるよ。」

「あり…がとう。」


じんわりと心と耳にしみていく、陸くんの声。
…今日、陸くんに会えて良かった。


「またね、陸くん。」

「またね、海央ちゃん。」


そう言ってパタンとドアを閉める。
入る前は悲しさとか切なさとか苦しさとか、そんな感情がぐるぐるしていた心の中が、出た今となっては少しだけ軽くなっていることを感じながら私は家のドアを開けた。