「はぁっ…長いよ…樹…。」


潤んだ瞳で俺を見つめる美森は、ほんのりと頬が赤く染まっていて、それだけでどこか色っぽい。


「したいことしていいって言われたからしただけ。」

「…びっくりした。」

「俺もびっくりさせられたし、お返し。」

「もう…寝てもいい?まだちゅーする?」

「…したくなったら寝ててもするからいいよ。美森は眠いんだろ。」

「眠…い…。」

「寝ていいよ。」


俺は美森の上から退く。すると美森が小さく俺の制服の裾を引いた。


「傍にいてね?」

「いるって。安心して寝ろ。」


そう言って俺は美森の頭を撫でる。


「…安心する、樹の手。」

「そっか。」

「あったかくて…気持ちいい…。」


どんどん覚束なくなる声。眠さの限界だったんだろう。


「だから隣で寝るんだよ?」

「え?」


不意に少しだけはっきりとした美森の声に驚いて美森の顔を見つめると、今にも寝そうな目をしながら口を開いた。


「樹の隣はいつだってあったかくて気持ちいい。
だから、樹が隣にいてくれなくちゃ眠れない。あったかい気持ちでは…眠れないの。」


…多分これは眠り姫最大のワガママだ。俺がいなくちゃ眠れない、だなんて。
俺はこれから何度、彼女の寝顔だけで我慢することになるんだろう。