お姫様の作り方

* * * 


いつもの場所…と言っても最近は滅多に来なくなった場所に来た。少し寒いけれど、冷静に考えるには丁度良い。
リンゴを貰ったのは嬉しいけれどなんだか食べる気にはなれなくて、まだ右手に持ったままだ。


…思い出せば最初はリンゴだった。リンゴを食べてるところを見られて、白雪姫のようだと言われた。
最悪だと思った。それなのに…


「雪ー姫さん?珍しいですね。」

「洸!」


…せっかく一人で考えようと思ったのに、考える対象が傍にいたら…無理だ。さすがのあたしでも。そう思って立ち上がった。


「もう戻るとこ。」

「嘘ですね。」


洸が、背を向けて進もうとしたあたしの腕を掴む。あたしは振り返らない。


「戻るってば。」

「嘘だって言ってるんです。来たばかりでしょう?」

「……。」

「教室を出る雪姫さんが見えたから追い掛けて来たんですよ。…なんだか顔が困っていましたから。」


…どうして、洸は。洸には、分かってしまうんだろう。


「…あたしが困ってるって思って来たの?」

「はい。悩みなら打ち明けてほしいと思いました。」

「…なんで分かるの。」

「なんでって…勘みたいなものもないわけではないと思いますが…雪姫さんのことだからかなって思っています。」

「どういうこと…?」


少しの間があって、洸の手があたしの腕を離した。
洸の手があたしの向きをゆっくりと変える。…抗えない。
そして洸の右手があたしの右頬に触れた。