お姫様の作り方

* * *


「ん…。」


少し肌寒さを感じて瞳を開けた。すると右側にはほどよく温みを感じる。そう思って顔を上げると、あまりにも整い過ぎた寝顔がそこにあった。


「っ…洸…!」


思わずのけぞると、あたしの左肩を抱いていた手がするりと落ちた。それに反応して洸がゆっくりと目を開いた。


「…雪姫…さん…?」


〝雪姫〟と一瞬だけ呼び捨てにされたことが、何故か不思議な響きを伴っている。せっかく眠ることで収まったはずの鼓動がまたうるさくなった。


「あ、あぁ、すみません。僕も眠ってしまっていたんですね。」

「ち、近いっ…!」

「あ、あ、ごめんなさい。でも僕、今自分以外は何も持っていなかったので、雪姫さんを温める方法が…というか雪姫さんが崩れ落ちそうになったのを止めたらこんな形に…。でも、離さなかったのは僕ですし、抱き寄せたのも僕です。今更何を言っても言い訳にはなりますね。」

「っ…だから…そんなバカ正直に全部言わなくていい。」

「ですが、雪姫さんにとっては望ましくない状況でしょう?」

「…別に。」

「え?」

「っ…もう言いたくない。っていうか今何時?」

「え、あ、えっと…12時半ですね。1時間ほど眠っていたようです。」

「お昼休みじゃない!ご飯食べないと!」

「…そうですね。あ、じゃあちょっと僕の教室に寄って行きませんか?」

「…それは嫌。」

「何故ですか?」

「あんたと一緒にいるのは目立ち過ぎる。」

「それが何か?」

「…面倒事が増えるもん。」

「面倒事ってなんですか?」

「色々。」


内心、察しろよと思う。でもそこはぐっと堪える。


「では…そうですね、図書館。図書館で待ってます、放課後。
美味しいものをあげますよ。きっと雪姫さんは好きです。」

「…美味しいの、それ。絶対?」

「絶対です。放課後、お待ちしています。
では先に戻ってください。僕は少し時間を置いてから戻りますので。」


洸に促されるままに、あたしはその場を後にした。
『気が向いたら』と答えようと思ったのに、美味しいものの誘惑に勝てないあたしは…やっぱりどうかしてる。