お姫様の作り方

* * *


翌日。今日は朝、特に何も起こらずに(転ばなかったし、ぶつかられたりカバンをぶちまけたりすることもなかった)無事に教室に辿り着いた。いつもよりも10分も早く。


「おはよ…ってこれ…。」


辿り着くまでは、平気だった。むしろ、ちょっと浮かれてたかもしれない。昨日の余韻で。でも、自分の席を見て愕然とする。


「ちょっと!誰がやったの!?」


まだ教室にいる人はまばらな状態で紫音が叫んだ。それに応じて、数名の男子が気まずそうに口を開く。


「俺らじゃねーから。」


チョークで書かれた「うざい、消えろ」の文字。白と赤が重なって、まさに書き殴られている状態だ。


「紫音、いいよ。拭けばいいだけだから。」

「良くない!」

「紫音…、大丈夫だから。」


あたしは紫音の制服の袖を引いた。こんなことでこれ以上注目を集めるのは嫌だ。
カバンをイスの上に置き、コートを脱いで、あたしは後ろの掃除用具入れから雑巾を取り出した。水拭きしないと取れないだろうな、これ。


「舞…。」


切なげな、そして苦しげな紫音の声が背中の方から聞こえてきて、そのせいでいきなり目頭が熱くなる。…でも、泣いちゃダメだ。泣いても何も解決しない。


あたしは雑巾を水で濡らし、よく絞ってから教室に戻った。
…じんわりと目に込み上げる涙を見せたくなくて、前髪で顔が隠れるくらいには頭を下げながら、ただ黙々と拭いた。