お姫様の作り方

顔の赤さは熱となって伝染した。


「っ…な、なに…だって、ついてたし!」


あたしは指先についたピーナッツクリームを洸に見せた。顔は鏡を見ていないからどのくらい赤いか分からないけれど、おそらくは洸と同じくらいの赤さなのだろう。


「そ、そうでしたか!び…っくりしました…。」

「こっちがびっくりするから…そういう顔やめてよ…。」

「熱いです、本当に。秋だっていうのに…。」

「…ごめん、驚かせて。でも別にクリーム取るってこと以外に他意はない!」

「…分かってます。」


洸の手が、あたしのクリームのついた指を掴んだ。そして小さく口を開けてぱくっとあたしの指を―――食べた。


…というよりはむしろ、唇が触れたと言うべきなのだろう。洸の唇がクリームをかすめ取った。あたしの指先に、クリームは少しだって残っていない。


「っ…あんた何を…!」

「クリームも雪姫さんの指も一瞬、美味しそうに見えたもので。」


洸はさらりと言ってのけたけれど、その頬はやはり赤くて、そのせいであたしの頬の赤さも多分増している。


「だからって…!」

「雪姫さんのせいでもありますよ?」

「なんで!」

「いきなり触れられれば、僕だって驚きます。びっくりさせられたらびっくりし返したくなるじゃないですか。」

「…辻褄全然合ってない。」

「そうですね。本音を言ってしまえば、雪姫さんが可愛くてつい悪戯をしたくなってしまったんです。」


悪びれもせずにほんのりと頬を染めたまま、洸はそう言った。