お姫様の作り方

【優馬side】


「え、あ、おいっ!」


俺の声には振り返らずに、一心不乱に箒を持って走るその後ろ姿は、もしかしたらシンデレラの王子が見たものなのかもしれない。
…とか、ちょっと思っちゃう自分はかなりガラスの靴のチャームにやられている。


いや、やられたのはチャームにじゃない。〝あいつ〟にだ。


ありがとうと言って笑った顔が信じられないくらい可愛くて、そのくせ思ってることは顔の割には口が悪いだったりと失礼極まりないやつでもあって。
…よく分かんないけど、可愛くて面白い。


「ガラスの靴落として、出会ってっつーのは逆だな。」


物語とはズレている。シンデレラは王子を王子と知らずに出会って、そして去り際にガラスの靴を落としていく。


「でも、俺を〝灰吹くん〟だと思ってないあたりは同じか。」


何をどう勘違いしたのか知らないが、俺はあいつの言う『灰吹』ではないなんて一度も言っていない。むしろイケメンが2人いるっていう発想の方がおかしくないか?…まぁいい。今更何を言ってもどうしようもない。


ただ、取り残された王子の気分になって言ってみると、残された情報のあまりの少なさに何から手をつけていいのか正直分からない。王子はよくガラスの靴だけでシンデレラに辿りつけたもんだ。…物語だからか。リアルじゃないもんな。


俺に残った情報はあいつの顔、声、身長というもう一度顔を合わせた時にしか使えないものと、ガラスの靴のチャームというものすごく小さい所持品、そして同学年という、全校生徒を3分の1にしか絞れない役立たずなものばかりだ。名前はおろか、クラスさえ聞いていない。


「さて、王子は手あたり次第いった、か…。」


好きかどうかはさておいて(いやまぁ正直顔は好みだった)、やっぱりもう一度会って名前は知りたい。
…王子ほどの財力がない俺は全て自力でやるしかない、けど。


「やるか。ひとまず明日頑張る。」


帰り道。今日は運よく、誰にも絡まれずに帰宅することができた。