お姫様の作り方

「あなたじゃなくて優馬。」

「ユウマ?漢字はどう書くの?」

「優しい馬で優馬。」

「優馬くん…本当にありがとう!」

「っ…。」

「…?あ、ってごめんなさい、長話しちゃって。もう帰るところだよね?
あたしも掃除終わったし、探し物も見つかったから帰らないと…。ってやば…今日のご飯はあたし担当で…!ほんとにありがとう!また!」

「え、あ、おいっ!」


あたしは箒を拾って用具入れまで走った。
…心臓が、ちょっとだけドキドキとうるさい。
というか、あんなにも自分の好きな顔があるんだってことにびっくりする。綺麗な顔。あと、ちょっとだけ優しい優馬くん。


「…嫌なことも色々あったけど、…へへっ、ちょっとだけいい日かも。いつもより。」


ちょっとだけなんて嘘。
いつもよりもずっとずっと良い日だった。


落としたものは本物のガラスの靴ではなく〝ガラスの靴のチャーム〟


拾ってくれたのは本物の王子様ではなく〝あたしの好みの顔の同級生〟


物語にはなりそうもないアイテムとキャストだけど、さえないあたしが主役の物語にはきっと充分だ。…むしろ、優馬くんとではつり合いが取れない。


「あれ、…そう言えば、何組なんだろ、優馬くん。
あと…灰吹…下の名前、なんだっけ?」


紫音に聞かれたらまた呆れられそうな独り言を、あたしはいつの間にか零していた。