お姫様の作り方

「探しているのはもしかしてこれ?」


へたりこんだままのあたしの目の前に、小さなガラスの靴が光る。
あたしはゆっくりと顔を上げた。


「えっと…はい…。」


それ以上言葉が続かなかったのは、目の前にいる彼の顔があまりにも…
―――あたし好みだったから。


短くて少しツンとした黒髪。そしてかっこいいけど、…でもちょっと可愛い感じもする小さな顔。
そんな彼がずっと探していたものをあたしの目の前に差し出している。


「リボン青ってことはタメか。」

「え、あ、1年です。」

「なんで敬語?普通に喋れよ。つか、いくらジャージ履いてるからって地べたにそうやって座るってどーよ。」

「え、だってずっと、それ探してて…。」

「これ?」


もう一度、彼の手があたしのチャームを揺らした。


「それ。」

「とりあえず立ったら?」


すっと差し出された、チャームを持っていない方の手。あまりにも自然に出されたものだから断れなくて、思わずすっと手を乗せてしまった。
そして乗せたところで気付く。誰かの掌が見える状態で差し出されて、それに自分の手を上から重ねるって、…なんだか舞踏会の始まりみたいだ。王子様とシンデレラが出会って踊り出す最初。本当の始まり。


あたしのそんな思考が彼に見えるはずもなく、重ねた手を突然ぐっと掴まれて、ぐいっと引っ張り上げられる。
…あれ、全然ロマンチックじゃない。


「何ぼーっとしてんだよ。つかジャージ、汚れてんぞ。」

「えっ?あ、ほんとだ。ごめんなさい!」

「ぷっ…ヘンな奴。俺に謝る必要ねーし。」


あたしは笑われながらも膝をパンパンと叩いて砂を落とした。