視界が由貴でいっぱいになって、感じたこともない香りが鼻をかすめていく。
―――多分これが、由貴の香り。


私の唇に触れる由貴の唇を感じたのは、香りを感じた後だった。
じわりじわりと初めての感覚が脳に伝わってそれを認識する。


ゆっくりと顔が離れると、目の前が少し明るくなって頬が赤い由貴の顔を間近に見ることができた。
…多分私の頬も、自分では見えないだけで負けないくらいに赤いのだと思う。


「…好きだよ、俺、お前のこと。
会えない間、…結構寂しかったし、元気かとか気になってたし…。
つか、パーティとかで出会った奴と恋してほしくねぇとか思ったし…ぶっちゃけ。」

「…なにそれ。」

「…好きってこと、つまりは。」

「っ…。」


生まれて初めて異性に言われる〝好き〟という言葉がくすぐったくて余計に頬が熱くなる。嬉しいような、でもそれよりも恥ずかしさが上回るような…本当になんだかくすぐったい。


「だから…キスした。…嫌だったら、謝る。」

「今の…私のファーストキス。」

「…かなーと思った。」

「由貴は?」

「っと俺は…違うけど。」

「あ、なんだか不公平!」

「いやだってそれもう結構前っつーか…つか俺、普通に1ヶ月くらいでフラれたという痛い思い出が…。」

「…ちょっと可哀想だから許すけど。」

「嫌、だったか、やっぱり…。」


少しだけしょげた由貴は初めて見るから何だか面白い。
でもずっとこのままにしておくのは嫌だから、本当のことをちゃんと伝えよう。




「…嫌、じゃなかった。
私が選んで始めたいと思った気持ち、ちゃんとあるから。」


きっとこれは生まれて初めての私の〝恋〟。