お姫様の作り方

「…おい、涙出てんぞ。」

「え…。」


すっと左側から由貴の手が伸びてきて、私の涙を掬った。
―――これは悲しいから出てきた涙じゃないと断言はできる。だけど、何の涙かは分からない。


「お前の言ってることは真っ当だ。…続けろ。」


真正面から私の言葉を受け止めて言葉を返してくれるその優しさがじんわりと身体にしみる。余計に視界が滲んだ。


「…だ、だから、私は…行きたくない…行ったらもう戻れない気がする。」


向こうは少なからず私に対して好意があるはずだ。これは思い上がりなどではなく、そうでなければわざわざ私に会いたいなどという申し出が来るはずがない。
だから、もし行って〝虎南茉莉花〟として対応してしまった矢先にはもう逃げ場などない。私の願いは決して叶わない。


「そいつと恋が始まるって可能性はねーわけ?出会いのきっかけは父さんを通してだけど、でも始まったりするもんだろ。同じ身分同士でも。」

「身分って…現代にそんなもの…。」

「ねーとは言わせねぇぞ。どう考えてもあんだよ、格差社会だろーが。」

「…まぁ、格差社会だけど。」

「そもそもお前と俺だって住む世界が違うだろ?」

「…そう、ね。」


今はそれが少し寂しいというか切ないと思ってしまう。できれば同じ世界を生きてみたいと願わずにはいられない。


「あ、で話戻すけどどうなんだよその辺は。ありがちじゃねーの?」

「…ありがちかもしれないけれど、でも、何か心惹かれないのよ。恋の始まりが社交の場だなんて。」

「…つまり、お前は夢を見てるんだな、〝恋の始まり〟に。」

「っ…!」


多分図星だったからなのだろう。顔が急激に熱くなった。目頭も熱かったのに顔まで熱くなって私の頭部は完全にオーバーヒート状態だ。