お姫様の作り方

スマートフォンのマップのアプリを起動し、出会いの場所の周辺地図を出す。


「…この辺りに、確か…誰か住んでいたような…。」


記憶を手繰り寄せる。確か、クラスメートの谷口さんが住んでいた。比較的仲は良い方だ。(私は人当たりの良い方だし、普段から敵を作らないように生きている)


コートを羽織り、お財布とスマートフォンを大きめのカバンに入れて、部屋のドアを開けた。案の定、そこには猿田さんがいた。


「お嬢様、どこにお出かけで?しかもこんな時間に。」

「車を出してもらえるかしら?谷口さんの家は分かりますか?」

「存じておりますが…何故このようなお時間に?」

「クラスの皆さんで課題に取り組んでいるようで、よかったら来ないかと誘われました。それに、分からないところがあるから教えてほしいとも。」

「左様で…ございますか…。」


…少し苦しい理由だったのかもしれない。猿田さんはまだどこか私を疑っている。


「終了は10時だそうです。急いでいただけますか?」

「承知致しました。10時きっかりにお迎えにあがります。」

「お願いします。」


私はすっかり猿田さんの信用をなくしてしまったようだ。
…それも仕方がないことだけれど、一度自由を味わった身としてはなかなかに息苦しいものである。


車に乗って10分。谷口さんの家に到着する。
…良かった、これで灯りがついていなかったらこの場で嘘がバレていただろう。


「ありがとうございました。10時にお迎え、お願いします。」

「承知致しました。御勉学に励まれてください。」


猿田さんは私に一礼して、ゆっくりと車に乗り込んだ。その車が交通量の多い道に入っていくのを見届けてから、私は谷口さんの家を振り返る。


「嘘に使ってしまってごめんなさいね。お名前だけ、感謝するわ。」


今日履いてきたのは履き慣れたヒールのないブーツ。
だから走れる。あの場所まで。